2.TCP/IP基礎知識

2-1 インターネットとTCP/IP登場の背景


★軍事技術の応用から始まりました。
軍事的に通信が重要視された1960年代、ネットワークの一部に故障が起きても、別の経路を通して情報が伝送され、通信が停止しないようなネットワークの考えのもとアメリカで実用実験され生まれたのが、ARPANETと呼ばれるネットワークです。
インターネットの起源とも言われています。
この後ARPANET研究グループによってTCP/IPが開発され、ARPANETへの接続手順(=プロトコル)にこのTCP/IPが採用されました。
ARPANET:Advanced Research Projects Agency Network
1969年に米国防総省の高等研究計画局(ARPA)が導入したコンピュータネットワークです。各地に分散したUNIXコンピュータ同士をTCP/IPで相互接続するという形態は、現在のインターネットの原型になったといわれています。全米の4ヶ所(カルフォルニア大学ロサンゼルス校、スタンフォード研究所、カルフォルニア大学サンタバーバラ校、ユタ大学)をつないで開通し、その後徐々に接続個所を増やしていきました。当時主流だった中央集中型ではなく分散型を選んだのは、核攻撃を受けても全体が停止することの無いコンピュータシステムを作るためだったといわれています。

★普及には、UNIXが一役かっています。

限られた人達だけが使っていたTCP/IPは、大学や研究所で広く使われていたコンピュータOSのBSD UNIXに実装されたことで一般に広く広まることになりました。
UNIXの急速な普及とともに、UNIX同士を接続するかたちで、実験や研究目的としてインターネットがスタートし、インターネットの拡大とともにその接続プロトコルとしてTCP/IPは、いまや企業や一般家庭に対しても広く普及しています。
BSD: Berkeley Software Distribution
カリフォルニア大学バークリー校で開発されたUNIX互換OS。多くの派生OSがあり、インターネットサーバ用OSや研究用のOSとして広く普及している。386BSDとしてパソコン(PC/AT互換機)にも移植され、その後、パソコン用のUNIX互換OSとして386BSDの後継であるFreeBSDやNetBSDが広く普及している。

★TCP/IPの標準化

TCP/IPプロトコルの標準化については、インターネット上で開発される様々な新しい技術を標準化するIETFによって標準化され、RFCと呼ばれるドキュメントになり、インターネット上で公開されます。
IETF:Internet Engineering Task Force
 TCP/IPなどのインターネットで利用される技術を標準化する組織。インターネットの標準化を統括するIABの下部機関。ここで策定された技術仕様はRFCとして公表されます。
RFC:Request For Comment
インターネットに関する技術の標準を定める団体であるIETFが正式に発行する文書です。

 IP(RFC 791)、TCP(RFC 793)、HTTP(RFC 2616)、FTP(RFC 959など)などインターネットで利用されるプロトコルや、その他インターネットに関わるさまざまな技術の仕様・要件を、通し番号をつけて公開しています。

 RFCは連日のように発行されているため、どの文書が最新の仕様を指し示しているのか、RFC本体からは分かりにくいことがあります。このため、IETFでは定期的に技術の標準化動向を一覧できるRFCを発行しています。標準化動向をまとめたRFCの通し番号は100の倍数になる慣例があります。
IAB:Internet Architecture Board
1983年に設立された、インターネットに関する技術標準を決定する団体。ISOCの下部組織で、下部機関にRFCなどの標準を策定するIETFと、インターネットに関する様々な調査・研究を行なうIRTFがあります。
ISOC:Internet SOCiety
1992年に設立されたインターネット関係者の集まりで、学会的な側面と業界団体的な側面を持ちます。世界中の企業、団体、学術機関、政府機関、個人などが集まって、インターネットの普及の促進、関連技術の開発や標準化、インターネットに関する情報提供や教育の推進などを行なっています。下部機関にはIABやIETFがあり、インターネットに関わるさまざまな標準を策定しています。

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